ダーウィンの海

ダーウィンの海” という言葉があります。

 

私が初めてその言葉を見たのは、『現代質量分析化学 基礎原理から応用研究まで』(高山光男、早川滋雄、瀧浪欣彦、和田芳直 編)でした。 


 

 

序文として、ノーベル賞受賞者田中耕一博士が執筆をされており、その文中に出てきたのです。

  

その時は「ふーん」というくらいに思っていたのですが……

 

先日、吉野彰博士もノーベル賞を受賞された際に、同じく ”ダーウィンの海” について言及なさっていました。

 

ノーベル賞を受賞する研究者の方が揃って口にした言葉とあっては、気になって仕方ありません。

 

そこで、 ”ダーウィンの海” について調べ、 "ダーウィンの海" を渡りきるためには '文理融合’ が必要であるということを説明してみようと思います。

 

"ダーウィンの海" とは製品が売れるまでのギャップ

ダーウィンは言わずと知れたチャールズ・ダーウィンのことです。

 

ダーウィンの提唱した進化論は、現在いる生物は自然界で競争し、進化によって生き残った種であるという考え方です。

 

一方、海は地球の生命が始まった場所であり、うごめく大自然の象徴でもあります。

 

ダーウィンの海” という言葉は、基礎研究段階→開発段階と進んだ技術が製品化され、それから市場にもまれ、生き残れるかどうか? ということを考える文脈で使われます。

 

地道な基礎研究の末に製品化にたどり着いた製品が、世界中の競合製品としのぎを削り、淘汰を受けて優れた製品が勝ち残っていく様子を、”ダーウィンの海を越える” と表現するのです。

 

"ダーウィンの海" を越えるためには……

"ダーウィンの海" を越えるためには、製品が売れない時期も改良を続け、売れ始めるタイミングまで我慢する必要があります。

 

さらっと一文で書いてしまいましたが、新製品が "ダーウィンの海" を航海する過程で、製品に携わる人々が行っていることは、極めて高度なものです。

 

新製品が世に出るとき、その製品が革新的であればあるほど、売ることが困難になります。

 

誰もその価値を正しく評価できないからです。

 

製品が売れなければ、売れない原因を取り除くために、技術者は製品を改良します。

 

売れるまでは、この繰り返しです。購買者からの信頼を得ることができるまでは、これが続くのです。

 

しかも、売れない原因は、売り方にあるのか製品にあるのかも見極めながらこれを行う必要があります。

 

市場と製品は相互作用しています。

 

製品を売る人は、その製品を支える技術に無関心ではいられないし、技術者もまたその製品の売り方に無頓着でいてはいけないということです。

 

製品を売ることを文系的な仕事、製品を作ることを理系的な仕事、と乱暴にくくれば、”ダーウィンの海" を渡るためには '文理融合' が必要である、という要約になるかもしれません。。。汗(本当にとても乱暴ですね)